008バカ旦那倒れる
(「000東大パパ」から続けて読んだ方が楽しめます)
いよいよ受験生が正念場を迎える夏、いつものように部屋で勉強していると、廊下から父のうめき声が聞こえてきました。
「うー、もうダメだ。」
そして、ドタンと人が倒れる音。
あまりにもわざとらしいコントみたいなセリフだなぁと思いながら廊下に出てみると、風呂上がりの父が全裸で倒れていました。
「どうしたの!?」
「こ、腰が……、しびれて、う、動かない……。」
とりあえず命に関わる感じでは無さそうなものの、すぐに病院に連れていった方が良さそうです。救急車を呼ぶほどでは無いという判断をして、私が背負って近所の救急病院に連れていくことになったのでした。
夏とはいえ全裸のまま連れていくわけにもいかないので、服を着せなければいけません。
父愛用のゆるゆるのブリーフを履かせようとすると、父のチンコをまじまじと見ることになります。
あれ!?俺のチンコ?
と思うくらいに自分のチンコにそっくりで、遺伝子の偉大さに感心しながらブリーフを履かせたのを覚えています。非常時に皮の中に避難するところまでそっくりでした。
そんなこんなで服を着せ、片道10分くらいの道のりを父を背負って歩きます。すると、私の背中で父は
「あー、だいぶ楽になってきた。楽になってきた。」
と何度もつぶやきます。
ちょっと大げさに騒ぎすぎたもんだから、それとなくハードルを下げているんだろうなぁと思いながら、黙って病院へ急ぎました。熱が37度を超えると死にそうな顔をして仕事を休むような、怪我や病気にやたら弱い父でした。
病院へ着くと、父はいつの間にかすっかり元気になっていました。なまじ医療関係の仕事をしているものだから、専門用語を交えながら嬉しそうに自分の症状を説明し始めます。
診断結果は椎間板ヘルニアでした。
明らかに「信長の野望」のやりすぎが原因でした。
父のプレイスタイルは、畳に布団を敷いてある両親の寝室で、布団の上にあぐらをかいてコントローラーを握り、眠くなるまで延々とやって、そのまま寝るというものでした。そんな姿勢を毎日毎日長時間していたら、腰が悲鳴をあげるに決まっています。
帰り道、父は普通に自分の足で歩いていました。真夏の夜の道を家族そろって歩いているという非日常が楽しくて、すっかり夕涼みモードです。
そう言えば受験の時にプレッシャーをこれっぽっちも感じなかったのは、肩肘張らずに自由に生きて、こんなに幸せそうな父を見ていたからかもしれないなぁと思ってみたり。
なんていい話で終わるわけもなく、「信長の野望」は更なる波乱をもたらしたのでした。
(「009懲りないバカ旦那」につづく)
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