地方の秀才の東大離れ
先日、卒業した高校の先生から突然電話がかかってきて、母校で講演会をすることになりました。形式はまかせるから、授業枠を2コマ使って私の仕事に関する話をしてくれというお願いでした。
講演会は非常にうまくいきました。高校二年生を講堂に全員集めての講演で、一人も居眠りさせることなく楽しく2コマを終えることができました。
講演が終わった後は、私に講演を依頼してきた恩師達といっしょに飲みに行こうということに。
お酒も入ってぶっちゃけモードになると、講師として私に白羽の矢が立てられた理由が分かってきました。
要は、
「東大を卒業して一番分かりやすく楽しそうに仕事しているのが私だった」
からでした。
私の役割は、母校の高校二年生達に、
「東大を卒業したらこんな楽しそうな仕事に就いて人生をエンジョイできるんだ」
と思わせることだったのです。どうにかして東大志望の生徒を増やしたいのです。
学校側としては、分かりやすい看板となる東大合格者数を何とかして増やしたいのです。しかし、地方の超進学校というのは、放っておくと医学部志望だらけになってしまいます。
と言うのも、地方都市においては、東大卒の成功者とやらを見る機会が皆無で、東大を出るとイイことがあるらしいという実感を持ちようが無いからです。「金持ち=医者」であり、それ以外の金持ちと言えば一発当てた中小企業の親父とか地主くらいのもので、子どもはもちろんまわりの大人も含めて、
勉強が出来る子だ → 医者になるべし
という選択肢しか思い浮かばないのが普通なのです。
今考えてみると、私が東大を目指したのなんて、「東京大学物語」というエロ漫画を読んで、東大に行けばなんかすごいSEXが出来ると思ったからに過ぎません。童貞の妄想が原動力だったのです。
ふざけて言っているわけでなく、地方の超進学校から東大を目指す生徒なんて、そういう何だかワケの分からない衝動に突き動かされて行動してしまうタイプの、ちょっと危ういところがある生徒ばかりです。実際には見たことのない勝ちパターンの存在を信じて、その勝ちパターンに人生を賭けてみようと思っちゃうわけですから、
「海賊王に俺はなる!」
って言っているのと大して変わらないわけです。
その結果どういうことが起こるかというと、地方出身の東大生は凄まじい留年率を誇り、留年を重ねた末に卒業できない学生もたくさん出てきて、東大に行ったきり消息がよく分からなくなってしまう人ばかりとなるのです。マジで。
地方で東大を目指すうちに東大卒の勝ちパターンというものを妄想し続け、実際に見たこと無いもんだから際限なく膨らんでいって、いざ実際に東京に行ってからどうにもこうにも収拾がつかなくなってしまうのです。福岡県八女市出身で東大に行ったホリエモンとか分かりやすい例です。
一方で、最初から現実をよくよく分かっている開成卒業組の手堅いことと言ったら!東大では石を投げたら開成卒に当たる勢いなワケですが、驚くべき安定感できっちり無難な道に進んでいきます。
恩師と一緒に飲みながら、東大に進学した同級生のその後を確認してみて、消息不明になっている率の高さに改めて驚きました。
私も例に漏れず留年していて、大学を辞めかねない迷走ぶりでした。しかし、大学四年生当時の彼女(現在の妻)から、
「ていうか、海賊王とかバカじゃない?それより、ちゃんと卒業しな。」
的なことを言われたおかげで、何とか軌道修正することができたのでした。
ということで、イマドキの地方の秀才達は、厳しい時代に生まれただけに現実が見えているというか、堅実というか、ますます東大を目指さなくなっているようです。そして、それは正しいと思います。
存在しない何かを追い求めて旅立っていった東大組の仲間達は、今どこにたどり着いたのやら……。
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